2007 予防と健康管理レポート
1.はじめに
病は気からというが、心と体がどのように関係しているのか、どのように互いに作用しているのか、それと普段閉鎖された環境の施設高齢者に園芸療法を通した運動負荷強度と免疫機能との関係を中心にしるし、もっとも身近である心と体についてのレポートを作成する。
2.選んだキーワード
うつ病 免疫
3.選んだ論文の内容と概略
今回うつ病による身体疾患への影響について述べる、まずうつ病は白血球数の上昇、好中球とリンパ球割合の上昇、CD4/CD8比の上昇、血清ハプトグロビン、プロスタグランジンーE2、IL−6値の上昇、NK細胞の細胞活性の減少、リンパ球分裂促進刺激に対するリンパ球増殖能の減少などと関連していた。また、うつ病では視床下部‐下垂体‐副腎軸(HPA-axis)の亢進が一般にみられる。このような、内分泌・免疫機能への影響がうつ病による身体疾患への影響に大きく関与していると考えらえる。
うつ病による各種身体疾患への影響を研究によると、うつ病が2型糖尿病の発症を約2倍前後高めていると考えられる。うつ病が糖尿病を発症させる作用機序にゆいては、身体活動の減少など、社会、行動因子が関与していると考えられてきた。しかし、社会経済的身分、教育、運動、喫煙、飲酒などの社会・行動面の危険因子を補正した後でさえ、うつ病が糖尿病発症を有意に増悪させている。こうしたことから、社会・行動的危険因子だけでなく、直接的生理学的異常がうつによる糖尿病発症に強くかかわっているとかんがえられる。また、冠動脈虚血性疾患発症への影響を調べた7つ調査のうち6つがpositiveデータで、うつ病が冠動脈虚血性疾患の発症を1.17〜3.9倍高めていることがわかる。うつ病が動脈硬化を進め血液凝集機能を高めることがしられており、うつ病が冠動脈虚血性疾患の発症を促進する作用機序にかかわっているとかんがえられる。
身体疾患予後への影響について糖尿病では、うつ病の重症度が高くなるほど、血糖コントロールが悪くなることが報告されている。また、うつ病とメタ解析でも、1型糖尿病 2型糖尿病を問わず、うつ病を合併していると、血糖コントロールが不良になっていた。興味深いことに、うつ病が糖尿病合併症すべて(網膜症、神経障害、腎症、大血管障害、性器機能障害)において、うつ病と有意に関連していた。また糖尿病患者の死亡リスクでも有意に死亡率が上昇していた。
循環器疾患に関しては、抑うつ症状がある患者では、心筋梗塞発症後1年間の心血管イベント(心血管死、心筋梗塞再発、冠動脈血管形成術、冠動脈バイパス術、狭心症・心筋梗塞・心不全・不整脈による再入院)リスクが1.41倍(95%信頼区間:1.04〜1.92)となっており他の危険因子(年齢、性別、疾患重症度、喫煙、高血圧、糖尿病暦)とは独立した増悪危険因子であった。また、心筋梗塞患者でうつ病を合併していると、合併していない患者と比べ、死亡率の顕著な上昇がみられた。さらに、別の疫学調査によれば、うつ病の重症度が高くなるほど、心筋梗塞患者の死亡予後が悪くなったと報告されている。うつ病と心血管死との相関を調べたメタ解析でも心筋梗塞後のうつ病は心血管死に有意に関連しており、オッズ比では、2.59(95%信頼区間:1.77〜3,77)にものぼっていたことが明らかになった。
癌については乳癌患者において、うつ病により癌死亡率が3.59倍(95%信頼区間:1.39〜9.24)にもなっていた。また、血液悪性疾患の幹細胞移植後の予後では、うつ病を合併していると5年後の死亡率が1.48倍(95%信頼区間:0.76〜2.87)になっていたことが報告された。また、慢性関節リウマチに関しても死亡率を有意に上昇させることがわかっている。
そのほかに身体疾患にうつ病を伴っている場合には、予後を悲観して自殺がみられることがある。うつ病による自殺率はある種の疾患(末期腎疾患、癌、てんかん、AIDS)ではとくに高いので注意が必要である。
このように、うつ病は身体疾患の発症を高め、予後を左右することが明らかであり、患者のQOLを高めるだけでなく、身体疾患を予防しその予後を改善する上でも、うつ病の早期診断、早期治療はたいへん重要といえる。
身体疾患にうつ病を伴っている場合の治療についてうつ病と身体疾患を同時に治療することが必要であり、そのことにより双方の予後を有意に改善する。身体疾患についてはそれぞれの症状に応じて治療を行う。
つぎに、うつ病の薬物療法であるが、抗うつ薬には、三環系、四環系、SSRI(selective serotonin reuptake inhibitor)SNRI(serotonin noradrenaline reuptake inhibitor)、その他(スルピリドなど)に分けられる。従来の三環系抗うつ薬とほぼ同等の抗うつ作用があり抗コリン作用や抗ヒスタミン作用が低く心臓機能への副作用がすくないSSRI(フルボキサミン、パロキセチン、サートラリン)が最近急速に用いられるようになってきている。しかし、身体疾患をともなった患者の場合、他の薬物ですでに内服していることが多く、SSRIには薬物相互作用がいろいろあるので、注意する必要がある。いずれのSSRIも肝の薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CPY)に対する阻害作用を有している。基本的には、代謝阻害が考えられる場合には併用を避ける、あるいは、減量して慎重投与することが望ましい。
うつ病が見逃されることにより、身体疾患の治療や経過に著しく悪影響を与えていることがしばしば見受けられる。患者のQOL低下を防ぐのはもちろん、薬物や処置に対する不合理な不安・恐怖・症状コントロールに対して無力感、医療あるいは医療従事者に対する強い不信感を防ぐ意味でも、うつ病への早期の対応が望ましい。
施設高齢者の園芸療法(horticultural therapy:HT)による精神面、認知面、免疫機能への効果を示した研究がある。その中で免疫機能の結果について詳しく述べる。本研究では、s‐IgAを用いて運動負荷強度および免疫機能について調査を行った。運動強度については、実施郡における11回のHTセッションの前後と非実施郡のs‐IgA濃度を比較し、免疫機能については、実施郡と非実施郡のHT開始時の値と終了時のs‐IgA濃度を比較することで調べることにした。50%MaxHR(机仕事や歩行といった日常生活レベルの運動)65%MaxHR(会話が可能な軽いジョギング以上の運動)90%MaxHR(全力疾走)におけるs‐IgA濃度変化を比較し、日常生活レベルではs‐IgA濃度は変化せず、それ以外は一時的に低下することから、s‐IgA濃度の低下が、運動負荷強度の指標として有効であることがわかった。今回の研究においては、非実施郡は1時間の通常生活活動を送ったあとに、実施郡は1時間のHTセッションを行った後に、それぞれs‐IgA濃度を測定した。その結果、非実施郡においてはs‐IgA濃度に変化がみられず、実施郡においてはs‐IgA濃度の低下がみられた。このことから、園芸作業が日常作業レベル以上の運動レベルであることが明らかとなった。今回のHTにおける作業内容は、基本的に座位姿勢で行われていたが、土をまぜたり、水がはいったジョウロを持ち上げるなどして、身体への負荷がかかったものと思われる。
一方、運動生理学で効果的な運動負荷強度とされている70%MaxHR前後で、一定期間運動負荷を繰り返すと、平常時のs‐IgA濃度に上昇がみられ、これは免疫力が上昇したことをしめす。反対にそれ以上の負荷強度で運動を繰り返した場合、平常時においてs‐IgA濃度の低下が生じ、負荷を繰り返す前のs‐IgA濃度に戻らなくなる。そして平常時において、s‐IgA濃度の低下は免疫機能の低下を示すとともに、慢性ストレスが日常的にかかっていることを示すとの報告がなされている。今回、週一回のHT開始時と終了時のs‐IgA濃度を比較ことにより、免疫機能の効果を調べた結果、非実施郡では、有意な低下を示したのに対し、実施郡では若干数値が上昇した。秋から冬の寒い季節にかけ、高齢者は風邪を引きやすくなり、非実施郡における低下は、免疫力の低下が原因と思われる。こうした中で、実施郡の免疫機能維持は、高齢者の冬場のケアに意義のある活動といえた、またHT終了時の体調に関するインタビューでも好意的な意見がきかれた。以上の運動負荷強度および免疫機能による調査結果より、今回のHTは高齢者の免疫低下の予防に効果的な運動負荷強度であったことが示唆された。また免疫機能だけでなく、精神機能、認知機能といったものにもHTは効果を示した。
4.選んだ論文の内容とビデオの内容から自分自身で考えたこと、将来医師になる目で捉えた考察
うつ病になる人が増加しているということをビデオでみて、とても深刻なことだとかんじた。うつに対する考え方が世間、社会に徐々に浸透してきたとはいえ、うつ病に対する理解も低く、精神論的なことで済まそうとしていたと思うし、うつ状態になるのは、自分のせいだと感じ内へ内へこもっていき悪循環にはいってしまっていたのではないか、また、精神科、診療内科にかかっているということが、凶悪犯罪者の精神病歴などから、イメージが悪くなってしまったことも、社会で認知されない原因でないかと考えた。
が、確実にうつなどの精神病患者も現代社会のストレスの増加によりさらに増えていくと思う(減少することは当面ないと思う)、それに伴い社会での受け入れや対応などが進んでいくだろうともおもう。精神病というのは、遺伝的な要素もあると聞くし、まじめな人もなりやすいともきいた。それに人の心はどこか病んでいるものであると私は思っているので、うつや精神病に対し自分はならないとか、大丈夫だと思わずにいることが必要ではないかと思う。
今回このレポートを書いて一番大切なのは、QOLだと感じた。現在うつ病が増えているのはQOLの低下によるものでそれがもっともおおきな原因で現代病でもあると思う。
5.まとめ
うつ病が身体疾患の発症や予後を左右する。また、QOLの向上により免疫力も上昇することから心と体が深くつながっていることが実感できた。また、うつ病が増加していることなどから現代社会のQOLの低下が問題であり、豊かな社会≠豊かな心で豊かな心をつくることがうつ病の減少、免疫力の増加を促進していくのだと思う。